希望の夢路
だんだんと、心愛の声が遠のいていく。
ただでさえか細いのに、次第に弱まっていく声。


「わ、たし…ほのちゃんと友達になれて、よかった…」
「何言ってるのよ。しっかりしてよ」
「ひろとさんに…伝えて。わたし…ひろとさんに会えて、
ひろとさんのことを好きになってよかったって…
ありがとうって…」
「ちょっと、まるで別れのあいさつじゃないの。やめてよ。博人と別れるなんて、
私、絶対に許さないから」保乃果は力強く言った。
「ほの、ちゃん…」
「いい?別れちゃだめ」
「でも…わたし…めいわく…」
「こら。さっきから、迷惑ばかり言ってる。博人はそんなこと思ってないの。
自信持ちなさいよ」
「でもわたし…難病だし…」
「それがなによ。そんなこと関係ないわよ。
大事なのは、互いに愛し合っていること、でしょ?」
「ほのちゃん…」
「ね、しっかりするのよ。今からそっち、行くから。博人も行くからね。しっかりしてよ」
「ありがとう…、ほのちゃん…」
「うん。博人に代わるね」
「うん…」

「もしもし、心愛ちゃん!?」
「ひろと、さん…」
「今すぐ、そっち行くから。待ってて」博人の優しい声が、心愛を癒した。
「嬉しい…ありがとう、ひろとさん…ごめんなさい…わたし、ひろとさんに迷惑ばかり…」
「迷惑なんかじゃない」博人ははっきりと言った。
「ほんと…?」
「ほんと」
「…ありがとう、ひろとさ…」
「心愛ちゃん…?」

ばたん、という物音がして、心愛の声が途切れた。

「心愛ちゃん…?心愛ちゃん…!」
博人は何度も心愛を呼んだ。
しかし何の反応もない。不気味な静けさだけが、そこにはあった。

< 136 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop