希望の夢路
それからというもの彼女は起きる気配が全くなく、寝室に入ってから五時間が経過しようとしていた。
さっきは、強く言いすぎてしまった。
寝室のドアを開け、ベッドに近づくと彼女はぐっすりと眠っていた。
こう見ていると、彼女が目が見えないというのは嘘なのではないかと思ってしまう。でも、これは事実なんだ。
彼女はまだ、見えないという事実を受け入れきれてはいないと思う。
でも、それよりも僕の方が全く受け入れられていない。拒絶してるんだ、彼女が目が見えないということを。
簡単に受け入れてたまるか、と思ったりもするけれど、結局は受け入れて生きていかなければならない。
彼女は、強いなと思う。
難病のこともそうだけど、なかなか受け入れられない事実は、この世に五万とある。でも、彼女は逃げずに受け入れてきたんだろうな。
難病だと告げられた時、彼女はどんな気持ちだっただろう。
驚きもあっただろうし、悲しかったと思う。苦しみも、並大抵のものじゃなかっただろうし…。
こんな体だから、と恋愛ももしかしたら諦めていたのかもしれない。
でも、彼女は僕と出会って僕とお付き合いをしている。
なのに僕は、彼女の気持ちを考えているようでしっかりと考えていなかった。現実を、受け止めきれていなかった。自分のことだけで精一杯で、彼女のことなんて考えていなかったのかもしれない。優しい彼女に、僕は甘えていたのかもしれない。
彼女を幸せにすると誓った自分が今の自分を見たらどう思うだろう。
もしかしたら、殴られるかもしれないな。どうして彼女を悲しませたと。
傷つけたんだと。
僕は情けない男だ。
彼女を守ってあげられるのは僕だけなのに、僕はその責任を一旦放り投げてしまった。僕が背負う代償は、あまりにも大きかった。きっと神様は、僕に罰を与えたのだろう。
彼女を傷つけて苦しめてしまった代償として、彼女の視力を奪った。
僕は、これ以上彼女を苦しめてはいけない。あの時のように、笑って過ごせる日がまた来るように、彼女が心からの笑顔でいられるように、僕がしっかりしなければいけないんだ。
「あ、起きた?」
彼女が目を覚ました。
「博人さん」
切ないな、そんな呼び方をするだなんて。まるで、初めてあった人と話すみたいじゃないか。
「なに?」
「私、この家を出ます」
「な、何言ってんだよ」
彼女は決意の篭もった目で言うから、
僕は一瞬怯んだ。
「博人さんに迷惑をかけてしまうから、私この家を出ます」
「そんなこと、許さない」
僕は彼女を強く抱き締めた。
「そんなことしたって、無駄です。もう私の心は、博人さんに壊されました。もう、私は博人さんから離れます。その方が博人さんの幸せのためだし、
博人さんに迷惑かけてしまうから。
もう私の心は博人さんから離れてしまいました」
「ま、待ってよ心愛ちゃん…」
彼女は僕の体からするりと離れていき、寝室のドアへと向かった。
さっきは、強く言いすぎてしまった。
寝室のドアを開け、ベッドに近づくと彼女はぐっすりと眠っていた。
こう見ていると、彼女が目が見えないというのは嘘なのではないかと思ってしまう。でも、これは事実なんだ。
彼女はまだ、見えないという事実を受け入れきれてはいないと思う。
でも、それよりも僕の方が全く受け入れられていない。拒絶してるんだ、彼女が目が見えないということを。
簡単に受け入れてたまるか、と思ったりもするけれど、結局は受け入れて生きていかなければならない。
彼女は、強いなと思う。
難病のこともそうだけど、なかなか受け入れられない事実は、この世に五万とある。でも、彼女は逃げずに受け入れてきたんだろうな。
難病だと告げられた時、彼女はどんな気持ちだっただろう。
驚きもあっただろうし、悲しかったと思う。苦しみも、並大抵のものじゃなかっただろうし…。
こんな体だから、と恋愛ももしかしたら諦めていたのかもしれない。
でも、彼女は僕と出会って僕とお付き合いをしている。
なのに僕は、彼女の気持ちを考えているようでしっかりと考えていなかった。現実を、受け止めきれていなかった。自分のことだけで精一杯で、彼女のことなんて考えていなかったのかもしれない。優しい彼女に、僕は甘えていたのかもしれない。
彼女を幸せにすると誓った自分が今の自分を見たらどう思うだろう。
もしかしたら、殴られるかもしれないな。どうして彼女を悲しませたと。
傷つけたんだと。
僕は情けない男だ。
彼女を守ってあげられるのは僕だけなのに、僕はその責任を一旦放り投げてしまった。僕が背負う代償は、あまりにも大きかった。きっと神様は、僕に罰を与えたのだろう。
彼女を傷つけて苦しめてしまった代償として、彼女の視力を奪った。
僕は、これ以上彼女を苦しめてはいけない。あの時のように、笑って過ごせる日がまた来るように、彼女が心からの笑顔でいられるように、僕がしっかりしなければいけないんだ。
「あ、起きた?」
彼女が目を覚ました。
「博人さん」
切ないな、そんな呼び方をするだなんて。まるで、初めてあった人と話すみたいじゃないか。
「なに?」
「私、この家を出ます」
「な、何言ってんだよ」
彼女は決意の篭もった目で言うから、
僕は一瞬怯んだ。
「博人さんに迷惑をかけてしまうから、私この家を出ます」
「そんなこと、許さない」
僕は彼女を強く抱き締めた。
「そんなことしたって、無駄です。もう私の心は、博人さんに壊されました。もう、私は博人さんから離れます。その方が博人さんの幸せのためだし、
博人さんに迷惑かけてしまうから。
もう私の心は博人さんから離れてしまいました」
「ま、待ってよ心愛ちゃん…」
彼女は僕の体からするりと離れていき、寝室のドアへと向かった。