希望の夢路
私は、その場にしゃがみ込んだ。
「いつ、帰ってくるのかな…」
玄関にしばらく座り込んでいたが、
玄関からは少しだけ風が入り込んでくる。体が冷えるから部屋に戻ろうと思い、立ち上がった。

でも、部屋に戻るまでは時間がかかった。どこがどの部屋なのか、まだ未だにわからなくて彼の手にひかれていつも部屋に入るから、彼がいないと、ここがどこなのかもわからない。
それだけ私は、彼を頼りにしてきたのかもしれない。
仕事で疲れているだろうに、そんなことは感じさせず私の世話をしてくれている。私の食事も作ってくれるし、私は病気だから食費もかかってしまう。
なのに彼は文句一つ言わずに…。

怖いけど、外に出てみようかな。
またあんなことになったらと思うと
すごく怖いけど、でも前に進まなきゃ。彼に迷惑をかけている分、少しでも役に立たなきゃ。
買い物だけでも、してみようかな。

あ…でも、わからない…。
スーパーに行ったとしても、点字がある訳でもないし、私は点字が読めない。かといって、商品を教えてくれる人なんていないだろうし…。
どうしよう…。

買い物は、一人じゃできない。
ほのちゃんだって遥香さんだって
忙しいし、私、頼る人いない。

どうしよう。私、ひとりぼっちだ。

とにかく、少し散歩してみよう。
そしたら少しは、気分転換になるかもしれない。彼には何も言っていないから、それは少し罪悪感はあるけど少しくらいなら、大丈夫だよね。



私は、外に出てみることにした。
あれ以来、外には出ていない。
怖いけど、私は一歩を踏み出した。
その一歩が、大きな勇気が、私を闇のどん底へ突き落とすことになるとは、予想もしていなかった。

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