希望の夢路
「あ、そういえば」
僕は、さっきの彼女の言葉を思い出した。
「普通の人には表現しきれない『何か』って何?さっき言ってただろ?」
「よくわかんない」
「よくわかんないって…」
「あえて言葉にしたら、情熱、とか…?でも、なんか違うような…」
うーん、よくわかんない、と彼女は考えながら言った。
彼女はたまに、不思議なことを言う。
意味深なことを急に言ったりするからいつも彼女には驚かされてばかりだけど、
当の本人は全く気付いていないらしい。恐らく、無自覚なのだろう。
「美術館に展示されるって、すごいよね。なかなかできるようなことじゃない」
「だよね。それほど、魅力的なんだろうな」
「うんうん。たくさんの人を魅了する、っていうか」
彼女は大きく頷いた。

『作品を創る』ということに関してはとても熱心な彼女。
文章を書いて良いものを創ることに重きを置いている彼女のことだ。
熱心に絵画を見ているのは、そのせいでもあるだろう。
芸術家と作家では、もちろん作る作品は全く違う。
けれども根本は一緒だ、と彼女はいつも言っている。
創り出す作品は違えど、熱く燃えさかる炎のように、情熱の炎は消えることはない、と。

「芸術家だろうと誰だろうと関係ない。
夢を持った人間に共通しているのは、熱き情熱の炎、ただそれだけ。
それだけが、夢見る人(ドリーマー)を突き動かす原動力」

彼女は以前、そう強く語っていた。夢を語る人は、強いと思う。
しっかりと前を向いて、未来を見据えているかのように感じた。
どうしたらそんなに、強くなれるのだろうか。
今度、心の強さの秘訣を教えてもらおうかな。
そんなことを思いながら僕は、ドット柄の絵を近くでまじまじと見つめ、
目に焼き付けている彼女をじっと見つめた。

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