希望の夢路
「ほのちゃん、心愛ちゃん、ひろくん、どっこにいる〜?」
「あ、この声は…」
この柔らかな声は、遥香さんだ。
「はあ、あの子はいつも能天気ねえ」
ほのちゃんが溜息をついた。
遥香さんが、私たちのいる寝室に入ってきた。
「わお!情熱的なことしてるね!いいね、おふたりさん」
「情熱的なことって…」
ほのちゃんは苦笑いしているのかな。
「保乃果」
「ん?なに、博人」
「苦笑いしてるよ、保乃果は」
「ふふっ」
私は思わず笑ってしまった。
「あのねえ〜!!だからなんなのよ、さっきから!!私のことをいちいち報告ばっかりしてえ〜!」
ほのちゃん、もしかして怒っちゃったかな?意地悪しちゃって、なんか申し訳なくなってきちゃったな。
「いたいいたい、いたいよ、やめろって」
「心愛さん、ほのちゃんは今、ひろくんを叩いてるよ。あまり痛くなさそう」
「あのなあ、遥香…結構痛いんだぞ。意外と強いからな、保乃果は」
「あーのーねーえ!なんなの!私は女よ!男みたいな言い方しないでよ!ひどい!ひどいひどい!」
「いててて…わかったよ、ごめん。
ごめんって。保乃果も女の子だもんな」
「保乃果も、ってなによ、も、って!失礼しちゃう」
「ぷい、とほのちゃんは頬を膨らましてひろくんから顔を背けた!」
「ふふっ」
遥香さんの報告に頬が緩む。
「あのさ、遥香。博人と同じことしてるよ?」
「うん、わかってるよ」
遥香さんはきっと、笑っているんだろうな。目に浮かぶようだ。
「それにさ、報告の仕方!語尾がなんでビックリマークになってんのよ!?感嘆符!」
「えっへへー。まあ、いいじゃん」
「はあ…」
ほのちゃんは溜息をついた。
なんだかさっきから、ほのちゃん
溜息ばっかりついてない?
「遥香ってほんと、呑気…どうやったらそんな風になれんのよ」
「余計なことは考えないで、今を楽しむーって感じ」
「なるほど」
「あ、ほのちゃんなんでそんな細長ーい目してんの!ひどいっ」
「はいはい」
ほのちゃんは、相変わらずクールで人の話を聞き流すのが上手い。
すごいなと、私は思う。
ほのちゃんは可愛いから尚更。
私の憧れの一人は、ほのちゃんなんだよ。
ほのちゃんは、きっと知らないだろうな。

「今日私たちが来たのはね」
遥香さんが話し始めた。
「一緒に買い物に行きたいなって思ったの」
「買い物…」
怖い。買い物という言葉を聞くだけでもびくっと体を震わせてしまうのに、
こんなことで大丈夫なのだろうか。

< 188 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop