希望の夢路
「思わぬ掘り出し物もあるよね。買い物をしてたら」
「うんうん!あるある!なんていうんだろう、輝いてみえるというか…デザインとかがいいなって思ったり斬新だったり…」
「心愛ちゃんの目に叶う商品は、幸せだな」
彼がそう笑うから、私も笑ってしまった。
「心愛ちゃんは、お目が高いからねえ」
「えーっ、そんなことないよ。私、庶民の中の庶民だもん」
「そんなことないよ。心愛ちゃんって、アート系だよね」
「アート系?」
「うん。お洒落だし、デザインを重視している傾向にあるからさ」
「もーう!なに分析してるのっ!」
「はは。ごめんごめん。でも、機能性よりもデザインを重視してるだろ?」
「そ、それは確かに…デザインは気にするけど」
「可愛いのとか、色がとても綺麗だとかデザインが良いとか」
「ううー、」
認めたくないけど、私がデザインを重視しているのは彼の言う通り。
機能性も大事だけど、デザインの方が一枚上かなって。
どうせなら可愛いもの身につけたいもんね。
「認める?」
「認めますーー!」
「はは、良い子」
彼が私の頭を撫でた。
彼の撫で方があまりにも気持ちよくて
寝てしまいそうになるのだけれど、
「寝ちゃだめだよ」
といつも釘を刺されて、彼は私を寝させてくれない。嬉しいけど、眠い時は寝かせて欲しいのに、と思ってしまう。

「寝ちゃだめだよ」

ほらね。私が眠そうにうつらうつら
していたら、こんなことを言うの。
私が寝ていたら、つまらないのかしら。

「ひろくん、私が寝ちゃったらつまんない?」
「つまんない」
そう言って彼は、私から離れていく。

待って…どこに行くの、ひろくん。
ひろくん…?

彼の温もりを探しているうちに、
彼の手が私の両手を捕らえた。
びくっ、としながらも私は嬉しくて
彼に笑顔を向けた。

「…っ、ひろくん…!!」

彼はそんな私を見て余裕を失ったのか、私の両手を握りながら私に覆いかぶさった。覆いかぶさったときは、すぐわかる。最初はなかなかわからなかったけれど、最近彼はいつもこの体制だから…すぐわかるようになった。
ベッドに少しだけ強く私を押し付けた彼は、私に顔を近づけた。
「痛くない…?」
「うん、大丈夫」
私の反応を確かめながら、彼は私の手に自分の手をしっかりと絡めてくる。
「僕はここにいるよ。いつでも君の近くにいる。でもね、君が寝てしまったら僕はつまんないんだよ。退屈。ずっと起きててよ」
「ずっと起きてるだなんてそんなの、無理よ」
「わかってるよ。だから…こうやって一緒にいられるときに、もっと互いに感じ合おうよ」
「感じ合うって…?」
何を?と聞こうとしたけれど、その言葉は彼の唇が私の唇を塞いで、奪い取られた。
「こういうこと」
「ひろくんったら…」
「君がこれ以上不安にならないように、僕は君の体に愛を教え込む」
「ひ、ろくん…?」
彼の言っている意味がわからなかった。
嬉しいけど、愛を教え込むってどういうこと?私の体に…?
もしかして、もしかする?

私の体の震えは、彼の手に篭もった力で止まった。
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