希望の夢路

結ばれていく愛

「結愛、おいで」
僕がそう呼ぶと、突進してくるかのように駆け寄ってくる愛しき存在。
「ねーねー、今日はずっと遊んでくれるー?」
「ああ、遊ぶとも」
「わーいわーい!」
結愛は可愛らしい声で僕の目の前をぐるぐると走り回る。
「こらこら、結愛。あまり走り回ると、目が回るよ」
「だって〜、今日はずっとパパと一緒にいられるんだもーん!」
結愛の笑顔はとても可愛らしい。
甘えん坊なところは、母親そっくりだ。
「結愛、パパにベタベタしないの」
結愛の母親ー我が妻、旧姓 望月 心愛改め 町田 心愛が、口を尖らせていた。
「あー!ママ、やきもちだ!」
結愛が心愛を指さした。
「こら。人を指差すものじゃありません」
そう言って、心愛は僕の膝に乗っかっていた結愛を抱き抱えて離そうとするが、結愛の頑固さは心愛譲りで、一歩も引こうとしない。
「いいじゃないか。もう少しこのままにさせておいてあげれば」
僕はそう言うが、心愛は納得出来ないらしい。僕が結愛ばかり可愛がっていることが、気に入らないのだろう。
膝の上にちょこんと座って心愛を見上げる結愛は、とてつもなく可愛い。
「もう…わかったわよ」
心愛は溜息をついて、僕の膝に乗った結愛と僕をリビングに残し、リビングから去った。


「結愛は、パパとママ、どっちが好き?」
「結愛は、パパが大好き!」
「ママは?」
「うーん、ママは…好きだけど」
「けど?」
「パパを独り占めするから、嫌い!」
「こらこら、だめだろ?そんなこと言っちゃ」
結愛は小学三年生になったばかり。
僕が大好きなのは嬉しいけれど、心愛に対しては少なからず敵視しているらしい。


心愛は病気で、子供を産めるかどうかもわからない体だった。たとえ命を授かったとしても、産めるかどうかも分からず、産んだとしても心愛の命が危ないと言う話を医師から聞いていた僕は悩んだ。奇跡的にも、心愛は僕の子を妊娠して、出産した。
僕は、子供のことは諦めていた。
確かに子供は欲しかった。
でも、心愛の命が危ないかもしれないと聞かされた時は、心愛の方が大事だと心愛に言ったのだが、心愛は新しい命を産みたいと僕に言ったのだ。
その新しい命というのがー

「結愛。ママを嫌いだなんて言ったらだめだろ?」
「だってえ〜」
口を尖らせる我が子、結愛だ。
僕と心愛の子。
今のところ病気もなく、
すくすく育っているのは僕に似たのだろうか。健康であることが何よりの救いだ。我儘で甘えん坊で、素直で無邪気なところは、完全に心愛に似ている。心愛は、結愛を産んですぐ体調を崩しずっと寝込んでいて、一時はどうなるものかと心配したが、心愛の体調は次第に回復し、今に至る。
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