希望の夢路
「あっ…ごめんなさい!」
彼女はすぐに手を引っ込めた。
「いいえ、こちらこそ、ごめんなさい」
僕はちらりと彼女を見た。
痩身で、モデルのような体型をした彼女は、顔を赤くして俯いているように見えた。

「あの…どうぞ」
彼女は恐る恐る僕を見て言った。
「えっ?」
「この本…お先にどうぞ」
彼女は僕の前に本を突き出して言った。
「いや…先に手に取ったのは貴女ですよ。お先にどうぞ」
「いいえ…!お先に、お先にどうぞ…!」
彼女は、譲らない。けれど、僕だって譲れない。
「先に読んで下さい。僕は、他の本でも構いませんから」
「でも…」
彼女は困ったように僕を見た。
僕は、彼女が突き出した本をそっと彼女の手に戻した。
「本当に…いいんですか?」
彼女は僕を見て言った。
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます…!お言葉に甘えて先に読ませて頂きます」
彼女はにこりと笑った。

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