希望の夢路
「彼女は、こっちが心配になるくらい優しい心の持ち主で、純粋で…
何事も一生懸命で真っすぐで。確かに、すごく大人しいよ。
でも、それが彼女の魅力だ。彼女から大人しさを取ったら、何もなくなってしまう」
「そんな大人しいの?」
「うん」
「つまんなくない?そんな大人しかったら。第一、何考えてるかわかんないだろうし」
「そんなことない…!」
博人は珍しく声を張り上げ、急に立ち上がった。
「ちょっ…声大きい」
「ん…?ああ、ごめん」
博人は静かに椅子に座った。
「そんなに怒らなくても…」
保乃果は驚いた。博人が仕事以外で、ましてや彼女のことで、こんなにも怒るなんて。
こんなに感情的になった博人を見たのは初めてだ、と保乃果は思った。

「ごめんごめん、つい…」
「そんなに大人しいってことは、あまり自分の想いとか口にしない?」
「うん、まあ、そうだね」博人は苦笑した。
「そんなんじゃ…うまくいかないんじゃないの」
「大丈夫。心配ないよ」
「でも、ちゃんとお互いの気持ちを伝えあわなきゃ」
「大丈夫。伝えあってるから」
「本当?」
「うん。彼女は大人しいけど、ちゃんと想いは伝えてくれる。
まあ、僕がリードしないといけないけどね」
博人は笑った。
「んー、それってどうなの?
博人の愛が独り歩きしてるってことじゃないの?」
「違うよ。彼女は僕を愛している」
「何か、話聞いてたら不安になってきた」
「大丈夫だって。僕と彼女は円満―」
「ちょっと貸して」
保乃果は博人の携帯を奪い、電話をかけた。

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