希望の夢路
これが夢であればどんなに良いか。
お願いだからこの辛い下痢も下血も血便も止めて、止まってー。
そう何度願っても、過酷な現実は容赦なく私を襲ってきた。
吐き気に耐えながらも、あまりの辛さに涙が零れてきた。
「そんな状態だったのに、病院には行かなかったのか?」
「行ったの。下血と血便が出る前に」
「そしたら、医者はなんて?」
「急性胃腸炎だって」
「急性胃腸炎?」
私はこくりと頷いた。

「よく体調崩して、よく胃腸炎になったりしてたの。だから今回もそうじゃないかって」
「以前から?」
「うん」
「薬飲んで良くなった?」
「ううん。全然良くならなくて、寧ろどんどん悪くなっていったの」
「そっか…苦しかったな」
彼が、さも自分のことのように苦しい顔をするから、なんだか申し訳なくなってきた。
「薬が全く効かなくて…おかしいなって思い始めてたんだけど」
「下血したのは、それからなんだな」
「うん。すごく…怖かった。血便を見た時、私、死ぬのかなって思った」
嫌でも死というものを意識した。
血便が出るということは、よっぽど深刻な病気で手遅れな状態なんだろうという思いが嫌でも私の頭の中を支配していた。




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