希望の夢路
「それはそうかもしれないけど…でも心愛ちゃんは博人のものだし、昔よりも今が大事でしょ?現に、心愛ちゃんは博人を選んだんだから」
私は博人を励まそうと、背中を叩いた。
「いって…保乃果、あのなあ…!」
博人か私を見て眉間に皺を寄せた。
「博人に言っておかなきゃいけないことがある」
「言っておかなきゃいけないこと?」
「そ。本当、これからが大変なんだよ」
深い溜息をついた私を見た博人は、ただ黙って空を見上げた。
「…大変って、どういうことだよ?説明しろよ」
「心愛ちゃんに惚れてるその男、くせ者だよ」
「くせ者?」
「そ。そいつ、印刷会社の社長の息子」
「…まじかよ」
私の目には、大きく目を見開いてただただ驚いている博人が映っていた。
「社長の息子って…金持ちか?」
「うん、そうね。大変な男に気に入られちゃったわね、心愛ちゃん」
「誰にも渡さない。心愛ちゃんは僕だけのものだ」

あー、こんな言葉、言われてみたいわ。一度でいいから。でも縁はなさそうね、残念ながら私には。

「知ってる。でも、手強いよ。そいつ…心愛ちゃんのこと、ずっと好きみたいだから」
「ずっと…!?」
「そ。昔から好きだったみたい」
心愛ちゃんの話によると、高校の時からずっと好かれていたらしい。
当の本人である心愛ちゃんは当時全く気付かず、今になってそいつー矢崎智也に再会して想いを告げられたというのだ。
「てことは?えーと、八年くらい前からってことか…!?」
「そう…みたいね。意外と…長い片想いね?意外と、一途…?」
博人の顔が、曇り始めていく。
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