希望の夢路
「心愛ちゃん」
「はい」
「言いたくないかもしれないけど、話してくれないか。あいつとのこと」
できれば、知りたくなんてない。でも、知らなければならない。そうでなければあいつは、性懲りも無く彼女の前に現れ、否が応でも手に入れようとするだろう。それが、どんな手段であっても彼女を自分のものにしようとするだろう。
彼女を苦しめ傷つける結果にだけはしたくない。いや、絶対にそんなことはさせない。
彼女は、僕が守る。
逆にいえば、彼女を守れるのは僕しかいないんだ。
彼女の恐怖を打ち消すのも一歩前へ進む勇気を与えられるのも、僕次第なんだ。

「はい、私…」
「ちょっと待って」
「どうしたんですか?」
首を傾げる彼女。
「まず、落ち着いて話せるところへ行こう」
「それなら…」
彼女が僕を見上げた。
「私の家に」
顔を赤くしながらだんだんと小さくなっていく声の彼女が、はっきりと言った。
「本当に…いいの?」
僕はごくりと唾を飲んだ。

今まで彼女は、なかなか家には近づかせようとはしなかった。むしろ、私の家には近寄らないで、と言いたげな空気感があった。
今まで何度か、彼女の家に行きたいということを遠回しに言ってはいたが、その願いは叶わずじまいだった。
「はい…一緒にいてほしくて」
「本当に…いいんだな?」
僕は念を押した。
「はい…」
彼女は僕の目を見て、深く頷いた。
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