希望の夢路
「だって…その、私は、博人さんのお家に行くのはすぐじゃなくても…いつか、の話で…」
「だめ」
「えっ?」
「今じゃなきゃだめ。いつか、は来ないんだ。さあ、行くよ」
僕は彼女の手を握りしめた。
「で、でも…まだ早い…」
「だめ。心愛ちゃんがスイッチ入れたんだからね」
「えっ!?スイッチって…?」
「わかんない?」
「わかりません…」
あわあわと焦る彼女を見て、僕は頬を緩めた。焦ってキョロキョロしているところも、僕の目を見て助けを求めるかのように見つめてくる困り顔の君も、とても可愛いよ。

可愛い。可愛すぎてどうしようもない。どうしたらいい?
ああ、気が狂ってしまいそうだ。
だからといって、彼女をどうこうしようという気持ちはないのだが。
「僕のスイッチだよ」
「博人さんの、スイッチ…?」
彼女は何もわかっていないようだ。
僕の心に火をつけた当の本人は、目をぱちぱちと瞬かせている。
「つまり、こういうこと」
言葉で言うよりも、行動を起こした方が早い。行動に移した方が、彼女の理解ははやいということだ。彼女を優しく抱き締めると、顔を赤らめながら僕を見上げた。
「もう、博人さんったら」
彼女は身をよじって僕から離れようとするが、まだ離したくない僕はぎゅっと彼女を抱きしめた。
「んんっ、博人さん、早く行きましょうよ〜」
「…よし、行くか」
僕は彼女から身を離すと、小さな手を握り家への帰途を辿っていった。
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