希望の夢路

初めてのお家デート

「お邪魔します」
彼女が緊張の面持ちで僕の家の玄関で挨拶した。
「何もそんなかしこまらなくてもいいんだよ」
「何か…緊張してしまって」
彼女は苦笑した。
ここには僕と彼女の二人きりなのに、緊張している彼女。
確かに、初めてのお家デートってことだから緊張するのも無理はないか。
彼女の緊張が、僕にまで伝染してきそうだ。

彼女が玄関で靴を脱ごうとするのを見て、僕は彼女の動きを止めた。
「ちょっと待って」
無意識に、彼女を止めていたんだ。
どうしたんですか、と不思議そうに尋ねる彼女を、僕は座らせた。
「博人さん?」
「まだだめ」
「?」
彼女を座らせその隣に静かに腰掛けた僕は、我慢が出来なくなった。
今まで比較的冷静に、理性を保ってきたはずなのにーおかしいな。
「博人さん…」
目を潤ませる彼女を見た瞬間、抑えられなくなってしまった。
彼女をゆっくりと、優しく床に押し倒す。
「や…」
彼女は突然のことに驚きながら震えていた。
そうだよな。たとえ恋人だったとしても、急にこんな風に迫られるのは嫌に決まってるよな。

「…ごめん」
僕は彼女の髪を撫でた。
「もう少しだけ、このままでいてもいいかな?」
彼女は困り顔のまま、頷きもしなければ抵抗もしなかった。
やはり、彼女の意にそぐわないことはやめよう。
大切な彼女に嫌われたら、僕はこの先生きていけない。
離れようとしたその時、彼女がぐっと手を伸ばし僕の手首を掴んだ。
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