もう、我慢すんのやめた


***



「はい、芽唯の負け〜!いってら」


夏休みが明けた。
初日の今日は学力テストだった。


夏休みの前後はテストばっかりで嫌になる。

5教科のテストを5時間びっちり受けて、やっと掃除の時間がやってきたって言うのに


「なんで示し合わせたみたいに、みんなパーなの?」

「じゃんけんって、あいこ以外は誰か1人が負けるようになってんのよ〜」

「ずべこべ言わず行ってこ〜い!」


教室掃除担当の私は、同じ班のみんなとごみ捨てじゃんけんをしてまんまと負けた。


絶対、グーで勝てると思ったのに。


誰か一人くらいグー出してくれたっていいじゃん。よりによって、ごみ捨て……。


1人になると、すぐに昨日の弥一との水族館での記憶が蘇ってくるから、なるべくみんなと一緒にワイワイしてたかったのに。


「はぁ。じゃあ、行ってくるよ〜」


大きいゴミ袋2つ分。
両手で持ち上げて「う”っ」と声を漏らす。

教室のゴミ袋って無駄に重いからほんっと、やだ。


”いってら〜”なんてゆるい声に見送られて教室を出て、目指すは生徒玄関を出て少し歩いたところにあるゴミ捨て場。……地味に遠い。
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