もう、我慢すんのやめた
階段は半ば転がすように運んで、長い廊下は半ば引きづりながら歩いて。
やっと生徒玄関にたどり着く。
わざわざ靴をはきかえて捨てに行くなんて、なんてナンセンスなんだろう。校内にゴミ捨て場があればいいのに……。
スタスタ行ってしまったかと思えば、私が隣に並ぶのを待って、それからずっと歩幅を合わせて歩いてくれた佐倉との話題は夏休みのこと。
歓迎パーティ楽しかったね〜とか、
どこか行った?とか、
毎日ムダに暑かったよね〜とか。
ほんと、なんてことない世間話。
口数が多くない佐倉から返ってくるのはやっぱり途切れ途切れの単語でしかないけど
前と違って、私の一言一言にちゃんと答えてくれる。
それが、単純に嬉しい。
「今日のテスト難しくなかった?」
「現文死んだ」
「えー、現文?問題はいつだって数学でしょ」
「数学は答えが1つだから簡単だろ」
「現文は答えが自分次第なとこあるから楽じゃん」
「……お前、文系?」
「んー?どうだろう、佐倉は理系?」
「どっちかっつーとそう」
ゴミ捨て場の前までやって来た私達は、小屋のロックを外して重いゴミ袋を放り込む。