もう、我慢すんのやめた
”ツレない”なんて言いながらも楽しそうに笑うテツと、そんなテツに顔を真っ赤にする佐倉。
苦手だろうな、佐倉はこういう冷やかし。
なのに……なんで私のためにこんなに頑張ってくれるんだろう。
『付き合うからには大事にする。……彼女にするって、そういうことだろ』
”よく分かんねぇけど”なんて付け足して、早足に教室に入ってしまった佐倉の後ろ姿に
あのとき確かに感じた胸のときめき。
佐倉の言葉を素直に嬉しいって思った。
あの瞬間の気持ちを、ずっと大事にしよう。
佐倉のこと、私も大事にするんだ。
彼女になるって、そういうことでしょ?
「芽唯……、今日一緒に帰る?」
「っ、名前」
あんなに嫌がってたくせに不意打ちで私を呼び捨てにして、そのくせ恥ずかしいのかすぐ真っ赤になる。
「帰んの、帰んねぇの?」
「か、帰る……!」
今日、ずるくて、意地悪で
だけど、優しくていつも人のことばかり考えてて
こんなダメな私を甘やかしてくれる
そんな、生まれて初めての彼氏ができた───。