もう、我慢すんのやめた
だけど。
「ちゃんと付き合う?」
「……っ、」
「大事にする。……彼女にするって、そういうことだろ」
”よく分かんねぇけど”
そう続けて、照れたみたいそっぽを向く佐倉を見て思うのは
佐倉といたら、泣くことはないだろうなってこと。
弥一を想うとき、佐倉に感じるドキドキ。どっちも胸がギュッとして、苦しい。
だけど、そのふたつは明らかに別物。
どちらかが恋で、どちらかが恋じゃない。
弥一のことをこんなに好きだって思ってる自分がいる今、佐倉に感じるドキドキが恋じゃないんだってことくらい分かってるけど
あわよくば、このドキドキが恋になればいいと思ってる。
「私、弥一のこと……まだ好きだよ」
「ん」
「だけど正直、佐倉にもドキドキする」
「……」
「弥一のこと忘れて楽になりたいって、このまま佐倉といたら佐倉のこと好きになれないかなって思ってる。……ズルいよね、私」
「ズルいな」
「うん。だけど、それでも佐倉がいいって言ってくれるなら、今は佐倉のそばにいたい!……です」
勢いよく気持ちをぶつけて、最後の最後は蚊の鳴くような声になってしまった。