もう、我慢すんのやめた

「でも、嫌だよね!なんか……弥一のこと忘れるために佐倉のこと利用するみたいで」

「俺にもドキドキすんなら、アイツじゃなくて俺でいいんじゃねぇの」

「え……?」

「彼女なんかいらねぇって思ってたし、作るつもりもなかった」


気付けばもうすぐ家の前。
毎日、家が反対なのに送ってくれる佐倉に頭が上がらない。



「けど」そう言って、私の手を握った佐倉に、また心臓はトクトクと加速していく。


「さ、佐倉……?」

「俺のだって思ったら俺だって多少の独占欲は湧くし、取られたくねぇって思う」



2人の影が伸びるアスファルトを歩きながら、左手に佐倉の熱を感じている。



「それでもいいなら、もう俺のになれば?」

「っ、」



どうしよう。
───今、すごく嬉しい。


どう頑張っても、佐倉の言葉に首を横に振ることはできない。


佐倉は私のこと好きなのかな?

そんな思いがふと胸にモヤをかけたけど、

『俺のだって思ったら俺だって多少の独占欲は湧くし───』


……例えばこれが私じゃなくても、優しい佐倉ならきっと同じことをするんだろうなぁと思った。
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