もう、我慢すんのやめた
教室の入口に目をやった萌菜がニッと口角を上げて、タイミングよく入ってきた佐倉に手招きする。
私の背中には冷や汗が伝って、頭の中は見られたくなかった……!って思いでいっぱい。
「どう?愛しの芽唯のメイド姿!」
私たちのところへ真っ直ぐやって来た佐倉に、すかさず芽唯がそんなことを言い出す。しかも、私の背中をドンッと強く押して、無理やり佐倉の近くに追いやった。
「ちょ、萌菜!」
自慢じゃないけど、佐倉と付き合って早2週間ちょい。佐倉から甘い言葉なんて聞いたことがない。
そりゃもちろん、お互いが好きあって付き合ったわけじゃないし。私が周りを騙してる罪悪感から救ってくれただけって分かってるけど。
一応、彼氏なわけで。
私は佐倉の彼女なわけで。
……可愛いって言われたいって気持ちはもちろんある。
だけど
「……マジでそれ着んの?」
佐倉は私を見て、ぐっと眉間にシワを寄せた。
その反応に少なからずダメージを受ける。
佐倉のことだから褒めてはくれなくても、もっと適当な返事で受け流すんだと思ってたのに
意外としっかり否定的で驚いた。