もう、我慢すんのやめた
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「あ……」
放課後のグラウンドに、つい目で追ってしまう背中を見つけて、思わず立ち止まる。
本当、いつ見てもカッコイイなぁ。
───本田 弥一(ほんだ やいち)。
ひとつ上の3年生で、
サッカー部のエースで、
何を隠そう、私の幼なじみ。
それも、前に一度、告白しようと思ったことがあるくらいすごく、すごく大事で好きだった人。
弥一の部活が休みな日は一緒に帰って、お互いの家でマンガを読んだり、ゲームをしたり。
休日は私のワガママに呆れながらも、よく買い物に付き合ってくれた。
もしかしたら、弥一も私のこと……。
そう思ったことも、少なくなかった。
だけど、ある日突然。
『俺、彼女できたから』
そう言って、照れくさそうに笑った弥一の顔を。
告えばよかったって気持ちと、告わなくて良かったって気持ちが交差して
ぎこちない笑顔で『おめでとう』って伝えたあの日のことを。
今でも鮮明に覚えてる。
弥一に彼女が出来てから、自然と距離ができた。
一緒に帰らなくなって
お互いの部屋を行き来しなくなって
休日に誘うのをためらって
……気付けば、ろくに話さなくなった。