もう、我慢すんのやめた


***


「あ……」


放課後のグラウンドに、つい目で追ってしまう背中を見つけて、思わず立ち止まる。


本当、いつ見てもカッコイイなぁ。


───本田 弥一(ほんだ やいち)。


ひとつ上の3年生で、

サッカー部のエースで、

何を隠そう、私の幼なじみ。


それも、前に一度、告白しようと思ったことがあるくらいすごく、すごく大事で好きだった人。


弥一の部活が休みな日は一緒に帰って、お互いの家でマンガを読んだり、ゲームをしたり。

休日は私のワガママに呆れながらも、よく買い物に付き合ってくれた。


もしかしたら、弥一も私のこと……。


そう思ったことも、少なくなかった。


だけど、ある日突然。

『俺、彼女できたから』


そう言って、照れくさそうに笑った弥一の顔を。


告えばよかったって気持ちと、告わなくて良かったって気持ちが交差して


ぎこちない笑顔で『おめでとう』って伝えたあの日のことを。


今でも鮮明に覚えてる。

弥一に彼女が出来てから、自然と距離ができた。



一緒に帰らなくなって

お互いの部屋を行き来しなくなって

休日に誘うのをためらって

……気付けば、ろくに話さなくなった。
< 13 / 233 >

この作品をシェア

pagetop