もう、我慢すんのやめた
「あ、そうです!」
「足りないって探し回ってたから、俺らのクラスのあまり持ってきたんだけど」
さっきまで林田のことを疑っていた女子たちが、コロッと態度を変えて「林田グッジョブ」とガッツポーズを決めだした。
というのも、ダンボールを持ってきてくれた男子たちの上履きのラインが緑色だからだろう。
私たち2年生は赤。緑のラインは3年生だ。
なぜかみんな”先輩”に憧れるらしい。あわよくばお近付きになりたい!みたいな。
その感覚はよく分からないな〜なんて思いながら、これで作業の続きができると安心した私は
3年生の中に、見知った人を見つけてドクンと心臓が沸いた。
「……弥一」
ジャージを少しだけ着崩して、中には真っ赤なTシャツを着てる。文化祭準備期間は学校指定の半袖じゃなきゃだめなのに。
見つからないように慌てて背中を向けようとした私と、教室の入口にダンボールを重ね終えた弥一の視線が
バチッと交わる。
その瞬間、酷く泣きたくなって、佐倉に会いたくて。佐倉に、ここから連れて逃げて欲しいと思った。