もう、我慢すんのやめた
「芽唯」
弥一はいつだってそう。
私のファーストキスを奪ったあの時も
私にそばにいて欲しいって言ったあの時も
結局、私と向き合うのはそのときだけで。
追いかけてきてくれたりしない。
好き放題私の心を乱すだけ乱して、ほっとくんだ。
「……っ」
弥一が私の名前を呼んだせいでクラス中がザワついた。
”知り合い?”とか”どんな関係かな?”とか。
心底ほっとけって思う。
なんで、佐倉いないの。
「芽唯……、この間はごめん!」
私のいる窓際までゆっくり歩いてくる弥一。これ以上後ずされない私。
逃げ出そうにも足は鉛みたいに動かない。
「いっつも、自分勝手でごめんな。でも、芽唯にそばにいて欲しいって言ったのは本心だし、考えれば考えるほど他のやつに渡したくないって思う」
「……やめて!」
こんな教室の真ん中で。
みんなの前で変なこと言うのはやめて。
そんな気持ちから、キッと強く弥一を睨む。
弥一は少し驚いた顔をしたけど、それも一瞬で。
「今さらって思うかもしれねぇけど、俺やっぱ芽唯が好きだ」
「っ、」
目の前で悲しく揺れる瞳。
騙されない。騙されてたまるか。