もう、我慢すんのやめた



「佐倉、待って」


繋いでて欲しい。
私のこと、離さないで欲しい。

そばに置いてて欲しい。
アホだな、バカだな、しょうがないなって。

呆れながら笑って欲しい。



思い切り強く床を蹴って、勢いよく佐倉に駆け寄る。


「早くしないと休憩終わる……って、」

「まだ答えてないのに、置いてかないで」

「っ、」



ギュッと強く佐倉の手を握る。大きくて、ゴツゴツしてて、だけど温かくて優しい手。


「繋ぐ……!」

「別に無理して繋がなくても」

「無理してない!繋ぎたいから繋ぐの!……恥ずかしいから何回も言わせないで」



すぐに頭の中、弥一でいっぱいになるような彼女でごめん。だけど前よりずっと佐倉のことを考えてる時間が増えて


佐倉の笑った顔みたいなとか、佐倉ならなんて言うかなとか、佐倉は今何してるかな?とか。


そんな1日のちょっとした瞬間に思い出して考えるのは、いつも佐倉のこと。



「……あーもうっ、マジでお前さぁ」

「え、あ……ごめん!私から繋ぐのはまだダメ……だった?」



バァッと一瞬で顔を赤らめる佐倉に、慌てて繋いだ手を離そうとすれば


すぐに佐倉の手が追いかけてきて、逃がさないとばかりに捕まった。
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