もう、我慢すんのやめた


「ハッ……バカじゃん」

「なっ、ば、バカって。酷い」



そんな私を、佐倉が笑う。
嬉しそうに、楽しそうに、だけどどこか照れくさそうに。


フラフラしてる自分が嫌になる。

弥一のこと吹っ切れないくせに一丁前に佐倉に嫉妬してる。……そんなこと、佐倉には知られたくなかった。


どこまでも都合いいやつだなって思われたに違いない。

佐倉には私の悪い部分ぜんぶ、見えないようになればいいのに。私の良いところだけ、知ってくれればいいのに。


そんなことまで考える。


だけど、きっと佐倉は

私の良い部分も悪い部分も、ぜんぶ、ぜーんぶひっくるめて受け止めてくれるんだ。


それがお前だろ、とかカッコつけて。




……あぁ。そうか。


私はもしかしたらずっと。
「私は弥一が好きだ」って感情にただ支配されていただけなのかもしれない。

思い込んで過ごしてたのかもしれない。


自分の中で勝手に、弥一との関係にケジメを付けるまで、他の人を好きにならないように誰かを好きになることを拒んでただけなのかもしれない。

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