もう、我慢すんのやめた
「取りに行っちゃダメ!!」
大声で叫ぶ私に、男の子が「え?」と一瞬振り向く。
……間に合う!そう思った時には、体が勝手に動いてた。
近づく車がキキィィッとブレーキ音を鳴らして、なおもすごいスピードで向かってくる。
男の子に覆い被さるように抱きしめて、車に背中を向けて強く目をつぶったとき
「ばかっ!」
そんな声がすぐ側で聞こえて、
次の瞬間には、抱きしめていた男の子ごと強く突き飛ばされた。
───ドンッ
ほぼ同時に鈍い音が響いて、「きゃー!!!」と周りから悲鳴が上がる。
───何が起きたの?
突き飛ばされた時の強い力で肩にズキズキと痛みが走って、痛みに顔を歪めながらも状況を確認するべく目を開ける。
「大丈夫?ケガはない?」
「……お姉ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい、僕……ごめんなさい」
ギュッと強く抱きしめていた男の子を解放して無事を確認すれば、同時に恐怖からも解放された男の子は泣きじゃくる。
「大丈夫、怖かったね……もう大丈夫だからね」
言いながら、震えてるのは私の方だって気付いた。