もう、我慢すんのやめた

それ以上に、私を抱きしめたことを恥ずかしがってるなんて


「ニヤニヤしてんなよ、まじで」

「佐倉可愛いね、また赤くなってるよ」

「ほんっと腹立つな、お前。次は絶対助けてやんねぇ」


憎まれ口も、照れ隠しのひとつかな。
そう思うと、またまた可愛い。


なんだ、佐倉可愛いじゃん。


「ありがとね、佐倉」

「……つーか背中、くそ痛てぇ」

「今!?結構な時差あったね」

「お前、笑ってんじゃねえ!!」

「お前じゃなくて、芽唯!松永芽唯!」

「んなの、どーでもいいだろ」


よくない。

言い続けなきゃ、佐倉のことだからずっと"お前"で通すつもりでしょ?


……まぁ、佐倉の性格上すぐに名前で呼んでくれるわけないか。



「わりぃ!!ボール当たったろ?……大丈夫か?」


グラウンドから、走って来る音。
聞き慣れた、声。


佐倉とふたり、同時に声の方に視線を向けた。
そこに立っていたのは、やっぱり弥一で。


その顔には少しだけ、焦りが滲んでいた。
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