もう、我慢すんのやめた


「大丈夫ですか?聞こえますか?……すぐに救急車が来ますからね!」


そんな声にハッとして立ち上がる。
私たちがぶつかる直前、聞こえたあの声。


何かが車とぶつかる音。


……周りからの悲鳴。



怖い、怖くて、怖くて……足がすくむ。目の前には黒い車が1台停まっていて


その先の様子がここからじゃ見えない。



「……ちょっと待ってて?」


まだ痛みの残る肩を、反対の手で抱きしめて、男の子にそれだけ伝えた私は恐る恐る立ち上がる。


……ちがう。
まさか、そんなはずない。


1歩、また1歩、近づいて……
だんだん見えてくる車の先の様子。



「大丈夫ですか?聞こえますか!?ダメだ、意識が……救急車はまだ?」



買い物帰りの主婦らしき人が、懸命に話しかけているけれど、その先にいる相手は横たわったままビクともしない。



同じ学校の制服で、肩から部活バッグをかけたまま。昔からずっと付けてたお気に入りのバッドとグローブのキーホルダーが壊れて地面に落ちている。



「弥一……!!!」



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