もう、我慢すんのやめた


「入院中に必要なものの準備をするために、とりあえず今日は帰るわ」と、弘子おばちゃんが病室を後にしてからどれくらい経っただろう。


外はすっかり暗くなって、面会時間も残すところ30分ほどになった。


意識が戻らないこともあって、今はまだ2人部屋。
とは言え、隣のベッドの人は今朝めでたく退院したらしく、言ってしまえば1人部屋状態。


ベッドの脇に置かれたパイプ椅子に浅く腰掛けて、経って窓の外を眺めたり、また座って弥一の寝顔を眺めたり。


落ち着きなく過ごしていた私は、



『命懸けで守ってもらって。私はは一生、弥一に頭上がんないよ』


帰り際、不意にママが言った言葉を思い出す。


本当にそうだなって思った。
間に合う可能性なんて限りなく低かったはずなのに、向かってくる車に怯むことなく走ってきてくれるなんて、普通できっこない。


よく考えずに、体が動くままに……。


小さな命を助けたいって思ったのは事実なのに、もし弥一が来てくれていなかったら


ここに寝てたのは弥一じゃなくて、自分だったかもしれない。


そう思うと、未だに震える体。
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