もう、我慢すんのやめた


それって、佐倉と別れろってことでしょ?
そんなの……


「……芽唯がそばにいてくれんなら、夏の大会も諦めつくと思う」



ズルい。
私が断れないの分かってて、簡単にズルいこと言えちゃう弥一が憎い。


だけど、弥一の高校3年生の、今しかないこの瞬間をケガで奪ってしまったのは紛れもなく私だ。



「俺、すっげぇズルいね」



自嘲気味にハハッと乾いた笑いを零して、濡れた瞳で私を見れば「芽唯」と愛おしげに名前を呼ばれて、また泣きたくなる。


佐倉に出逢う前に、弥一とこうなりたかった。
どうせ佐倉と結ばれない運命なら、佐倉と出逢わなきゃ良かったのに。


もし未来が見えてたら、私はきっと、転校してきた佐倉と友達になったりしなかった。


ううん、もし友達になったとしても、間違っても好きになったりしなかった。


だって、自分の本当の気持ちを伝えることすら出来ないまま、バイバイしなくちゃいけないんだから。



「……私、もう弥一のこと」

「いいよ、それでも」

「っ、」

「ごめん。芽唯がいないと俺、ダメだわ」



佐倉に会いたい。
あの優しい手に、強く強く抱きしめて欲しい。

だけど、



「……分かった。治るまで弥一のそばにいるね」




───ごめんね、佐倉。
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