もう、我慢すんのやめた
「今朝、転校してきたクラスメイトの佐倉」
私の紹介のあと、佐倉が小さく会釈した。
佐倉のことだから、そっぽ向いちゃうかと思ってたのに。
「転校生?この時期に珍しいな。……そっか、彼氏じゃないんだ」
「私に彼氏なんかできないよ」
メイクも、ヘアアレンジも、極々たまーにするくらい。女の子らしさに少し欠けてる自覚ならかなりある。
そんな私に、彼氏なんて出来るわけがない。
そんなの弥一が1番知ってるくせに。
「……よかった」
「っ、」
不意に聞こえてきた言葉。
"よかった"
勝手に私の脳内は、その言葉の意味を探し出す。
別に深い意味なんてないのかもしれない。
だけど、私にはそれがどういう意味なのか追求せずにはいられなかった。
「それ、どういう意味?」
「芽唯に、彼氏がいなくてよかったって意味だけど」
「だから、それって……」
「俺、2ヶ月前に彼女と別れたんだよね」
───ドクンッ
"彼女と別れたんだよね"
それと、私に彼氏がいないこと
……どう関係あるの?そう思う自分と、この期に及んでまだ期待してる自分がいる。
もしかして弥一もやっぱり……って。