もう、我慢すんのやめた


───だけど。


もしも、最後にわがままをもう1つだけ言えるとしたら……ずるい私は佐倉に、他の誰のものにもならないでって言うと思う。


「幼なじみって、近いようで遠いよな。……芽唯は俺こと、ちゃんと"男"として好きだった?」


染まる茜色。
香る金木犀の匂い。

伸びた影に視線を落としながら、頭の中は佐倉でいっぱい。


「……今考えると、どうなんだろう?ずっと弥一は、弥一。男として好きとか、幼なじみとして好きとか、そんな難しいこと考えてなかったかな」



なんて、嘘。

ちゃんと男として好きだった。
弥一の1番になりたくて、ずっとずっと頑張ってきた。

他の子に取られたくなくて
弥一に釣り合う女の子になりたくて
弥一の前では少し背伸びをしてたところがある。


だから弥一には、素の自分をどれだけ見せれたんだろう。きっと、いつもどこか大人ぶってた。


「そこは嘘でも、ちゃんと男として好きだったって言うとこだから」

「……そういう弥一こそ、私のことずっと妹くらいに思ってたくせに」

「うん。思ってた。……でも、思い込もうとしてたってのが正しいのかもな〜」
< 188 / 233 >

この作品をシェア

pagetop