もう、我慢すんのやめた
───だけど。
もしも、最後にわがままをもう1つだけ言えるとしたら……ずるい私は佐倉に、他の誰のものにもならないでって言うと思う。
「幼なじみって、近いようで遠いよな。……芽唯は俺こと、ちゃんと"男"として好きだった?」
染まる茜色。
香る金木犀の匂い。
伸びた影に視線を落としながら、頭の中は佐倉でいっぱい。
「……今考えると、どうなんだろう?ずっと弥一は、弥一。男として好きとか、幼なじみとして好きとか、そんな難しいこと考えてなかったかな」
なんて、嘘。
ちゃんと男として好きだった。
弥一の1番になりたくて、ずっとずっと頑張ってきた。
他の子に取られたくなくて
弥一に釣り合う女の子になりたくて
弥一の前では少し背伸びをしてたところがある。
だから弥一には、素の自分をどれだけ見せれたんだろう。きっと、いつもどこか大人ぶってた。
「そこは嘘でも、ちゃんと男として好きだったって言うとこだから」
「……そういう弥一こそ、私のことずっと妹くらいに思ってたくせに」
「うん。思ってた。……でも、思い込もうとしてたってのが正しいのかもな〜」