もう、我慢すんのやめた
「……せっかく、ここの水族館名物のソフトクリームも奢ってやろうと思ってたのに。こないだの遊園地は食ってる途中で芽唯先に帰るし」
「え!……あ、あの時はその……ごめん。てか、食べるよ!食べたい!食べないとか無理!」
「フッ、なんだよ無理って。ったくしょうがねぇな、芽唯は。……ほら、行くぞ」
ゴツゴツしてて、大きくて、男の人の手。
佐倉もそうだったなって思いながら、でも佐倉と弥一の手じゃ、なんか全然違うなって。
何が違うのかって言われたら、上手くは言えないんだけど、柔らかさとか、温度とか、指の長さとか、私の手を包み込む角度とか。
……私の胸のドキドキとか。
ダメダメ!すぐに佐倉のことが頭に浮かぶのは悪いくせだ。今日は、弥一と水族館を楽しむために来たのに。
他のことなんて、考えるな私!!
───ブブッ、ブブッ
弥一と手をつなぎながら歩く私のショルダーバッグの外ポケットで、スマホが静かに2回振動した。
スッと、取り出して確認すれば2件とも萌菜からで。
やっぱりな、って思う。
【合流したなう!どうしよう!今さらめっちゃ緊張するんだけど(._.)】
【そっちはどう?】
そんなメッセージ。
萌菜には隠したくないなって思ったから、金曜日の夜に今日のことを電話で報告した。