もう、我慢すんのやめた
「場所、移す?近くに公園」
「っ、今!今聞いて?ここで、このまま」
佐倉の服の袖を掴んで、どこにも行かないでって。
今伝えたいの。
高ぶったままの感情を全部、この温度が少しだって冷めてしまわないうちに。
そんな私に目を見開いた佐倉は、服の袖を掴んでいた私の手をギュッと握りしめて「分かった」と静かに頷いてくれる。
それを合図に、私は自分の気持ちを一つ一つ口にすることにした。
不思議と、佐倉と触れ合っている手が私を落ち着かせて、身体中が心臓になったみたいにドキドキしてたのが嘘みたいに、今は呼吸が少しだけ楽になった。
「あのね、私……佐倉に嘘ついた。弥一のそばを選んだとき『どう頑張ったって弥一が好き』って言ったけど。あれ、大嘘」
勇気をだして言葉を口にする。
ゆっくりでいい、ちゃんと伝えようって。
そんな私の言葉を、佐倉は頷くでもなく、相槌を打つわけでもなく、ただ握った手に優しく力を込めて聞いてくれている。
「確かに弥一のこと、すごい好きだった。目が合うだけでドキドキして、名前を呼ばれると嬉しくて、好きってこういうことを言うんだって思ってた」