もう、我慢すんのやめた
「父子家庭でさ。親父と兄貴に守られて育って、そんな自分が嫌だった」
「えっ……」
「中学でトラウマ抱えてから、もう投げやりに生きてたとこあったし。転校しても人と深く関わる気なんてなかった。……なのに、ズカズカ俺の中に入ってきて、勝手に掻き乱して、楽しそうに笑って」
「……私、ですか」
「他に誰がいるんだよ」
佐倉は私をキツく抱きしめたまま。私は佐倉の胸におでこをくっつけて、佐倉に「ごめんなさい……」と小さく謝罪はした。
ドキドキとうるさい2人分の鼓動。
ドキドキしてるのは、私だけじゃないんだって思ったら、それだけではにかんでしまうくらい嬉しい。
「いつも守られて育った俺が、初めて守ってやりたいって思った。甘やかして、芽唯が苦しむ要素全部、俺がとっぱらってやりたいって」
「……佐倉」
「すげぇ余裕ねぇよ。芽唯のことになると、ガキみたいに嫉妬する。アイツのそばにいたいって言われたあと、気が狂いそうだった。……でも、大人ぶって"送り出す覚悟だった"なんて言ったけど、隣に芽唯がいない毎日は苦しくて仕方なかった」
耳元で聞こえる佐倉の声。ギュッと強く抱きしめられて、目には涙がたまり始める。
だけど、泣かない。