もう、我慢すんのやめた
まだ、言えてない言葉がある。
まだ、聞いていない言葉がある。
「……っ、」
泣くな、と奮い立たせて佐倉を真っ直ぐ見あげれば、同時に私へと視線を向けた佐倉と目が合って。
そう言えば、ここが水族館から少し離れた歩道で、周りには人がいっぱいいることを思い出した。
完全に2人の世界で、周りが見えてなかった。
「すげぇ見られてんな。……だから場所、移す?って聞いたのに」
「っ、だって……」
だって、早く佐倉に伝えたかったから仕方ないじゃんか。
こんな街中で抱き合って、周りからしたら迷惑なバカップルだって勘違いされてるかもしれないけど。
「今日は泣かないんだな」
「佐倉の前で簡単に泣くなって言われてる」
「確かに。……じゃあ、あれ取り消す。もう、芽唯は俺の前でしか泣くな」
取り消すの得意だな、佐倉は。
勝手だなぁって思うのに、その言葉がまた私の涙を誘って、いよいよ堪えるのが大変になって来た。
ここで、素直に頷いてしまったら、きっと涙が頬を伝って流れるだろうなってくらい。
うるうると涙で視界が滲んでいく。