もう、我慢すんのやめた
いつもなら絶対、何かしら言ってくるのに、
今日は私の言葉に静かに日焼け止めを塗りこみ始めた佐倉。
なんだろう。
やけに塩らしい佐倉もまた、気持ち悪い。
「他も塗る?首とか、足とか」
「……お前は、少し平気かも」
「え?なにが?」
日焼け止めを顔の高さまで上げて、もっといるかと聞く私に、質問とは違う答えが聞こえた。
「触られても、嫌じゃねぇかも」
「……え?この間まであんなに嫌がってたじゃん」
「なんか今日、調子いいわ」
女性恐怖症って調子とかあるの?
ないでしょ。
ほんと、変なやつ。
普段ツンケンしてるくせに、たまに自分から寄ってくる……みたいな。
あれだ、野良猫みたい。
「……それで、いる?日焼け止め。頭皮にも少し塗った方がいいかもよ」
「いらねぇ、別に焼けてもいいし」
「じゃあ、なんで腕に塗ったのさ……」
野良猫に懐かれた時の気分は、最高だけど。
懐いたフリして甘えてくるのはその一瞬だけで。
次に見かけた時には、またツンッと背中を見せて行ってしまう。
佐倉は、そういう所まで野良猫そっくりだ。