もう、我慢すんのやめた
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あれから、水難救助訓練を受けた私たちは宿泊先のコテージがある海水浴場に移動して
ついに萌菜が楽しみにしいたフリータイムがやって来た。
灼熱の太陽の下、海岸には小さな子どもみたいにはしゃぐ高校生の群れ。
思っていたより一般のお客さんも沢山いて、ここだけやけに賑わってる。
「みんな元気だなー」
どうせ泳げないし、私はパラソルの下でラムネを飲んでる方が断然幸せだ。
「ちょっと!まさか芽唯、泳ぎに行かないの?」
「行かないよ、そもそも泳げないし」
「ばか、誰が本気で泳ぐのよ!水着でキャッキャウフフするのが臨海研修の醍醐味でしょ?」
それは、臨海研修の醍醐味ってより
萌菜の中での醍醐味でしょ。
誰もがそれを醍醐味だと思ってる風に言わないでよ。
それに、萌菜にはテツがいるんだし。
私は大人しく浜辺でふたりを見守る係に徹する。
「ま、仕方ねぇじゃん!こうなりゃふたりで行くか」
「え!?……テツとふたりで?」
「だって、佐倉のヤツは海水浴場着いてすぐバックれるし、西川は日に焼けたら大変だし」
「……随分、西川さんのこと心配するじゃん」
「当たり前だろ?萌菜と違って色白なんだから。焼けたら絶対痛いじゃん」
このふたり本当、仲がいいんだか悪いんだか。