もう、我慢すんのやめた

***


あれから、水難救助訓練を受けた私たちは宿泊先のコテージがある海水浴場に移動して

ついに萌菜が楽しみにしいたフリータイムがやって来た。

灼熱の太陽の下、海岸には小さな子どもみたいにはしゃぐ高校生の群れ。

思っていたより一般のお客さんも沢山いて、ここだけやけに賑わってる。


「みんな元気だなー」


どうせ泳げないし、私はパラソルの下でラムネを飲んでる方が断然幸せだ。


「ちょっと!まさか芽唯、泳ぎに行かないの?」

「行かないよ、そもそも泳げないし」

「ばか、誰が本気で泳ぐのよ!水着でキャッキャウフフするのが臨海研修の醍醐味でしょ?」


それは、臨海研修の醍醐味ってより

萌菜の中での醍醐味でしょ。


誰もがそれを醍醐味だと思ってる風に言わないでよ。


それに、萌菜にはテツがいるんだし。
私は大人しく浜辺でふたりを見守る係に徹する。


「ま、仕方ねぇじゃん!こうなりゃふたりで行くか」

「え!?……テツとふたりで?」

「だって、佐倉のヤツは海水浴場着いてすぐバックれるし、西川は日に焼けたら大変だし」

「……随分、西川さんのこと心配するじゃん」

「当たり前だろ?萌菜と違って色白なんだから。焼けたら絶対痛いじゃん」


このふたり本当、仲がいいんだか悪いんだか。
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