もう、我慢すんのやめた
結局、ふたり仲良く海に向かう萌菜とテツの後ろ姿を見ながら
同じ幼なじみでも、私と弥一とは全然違うふたりをまた羨ましく思う。
何だかんだ言って、テツは萌菜が大事で。
萌菜はテツが大好きで。
ちゃんと想いあってるはずのふたりが、絶妙な距離を保ってる今。
どちらかが想いを伝えたら、きっと。
「上手くいくと思うんだよなぁ」
ボソッと漏らした独り言は、誰に向けたものでもないのに。
想いを言葉に出来ないまま終わった、自分の初恋と重ねて、ただ虚しくなった。
「あ、あの……芽唯ちゃん」
「紗蘭ちゃん!どうしたの?コテージで休むんじゃなかったっけ?」
「やっぱり、泳ぎに行こうかなって……!」
「そうなんだ!萌菜たち先に行っちゃったけど、紗蘭ちゃんが来てくれて喜ぶと思うよ」
「私、引っ込み思案で友達もできなくて……。だから、この臨海研修でみんなと仲良くなりたくて」
小さい声で、だけど強い意志を持って私に言葉を紡ぐ紗蘭ちゃん。
その言葉に、じわり胸が熱くなる。
「部屋にこもってるだけじゃ、今までと変わらないって思って……だから」
「もう、友達だよ」
少なくとも私は、ずっと友達だと思ってた。