もう、我慢すんのやめた

結局、ふたり仲良く海に向かう萌菜とテツの後ろ姿を見ながら

同じ幼なじみでも、私と弥一とは全然違うふたりをまた羨ましく思う。


何だかんだ言って、テツは萌菜が大事で。
萌菜はテツが大好きで。


ちゃんと想いあってるはずのふたりが、絶妙な距離を保ってる今。


どちらかが想いを伝えたら、きっと。


「上手くいくと思うんだよなぁ」


ボソッと漏らした独り言は、誰に向けたものでもないのに。

想いを言葉に出来ないまま終わった、自分の初恋と重ねて、ただ虚しくなった。



「あ、あの……芽唯ちゃん」

「紗蘭ちゃん!どうしたの?コテージで休むんじゃなかったっけ?」

「やっぱり、泳ぎに行こうかなって……!」

「そうなんだ!萌菜たち先に行っちゃったけど、紗蘭ちゃんが来てくれて喜ぶと思うよ」

「私、引っ込み思案で友達もできなくて……。だから、この臨海研修でみんなと仲良くなりたくて」


小さい声で、だけど強い意志を持って私に言葉を紡ぐ紗蘭ちゃん。

その言葉に、じわり胸が熱くなる。


「部屋にこもってるだけじゃ、今までと変わらないって思って……だから」

「もう、友達だよ」


少なくとも私は、ずっと友達だと思ってた。
< 25 / 233 >

この作品をシェア

pagetop