もう、我慢すんのやめた
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「やっぱり、ここにいた」
私を見つけるなり、眉間にシワを寄せる佐倉。
そんな嫌そうにされると心が痛むよ。
「……なに?」
「別に、どこいったのかな〜って探しに来てみただけ」
「あんな人混み、いられねぇよ」
佐倉が座ってるベンチの反対端に腰を下ろせば、顔を見なくても雰囲気で嫌がられてるのが伝わってくる。
「そんな嫌そうにしないでよ。人一人分はちゃんと離れたのに」
「……海、行かねえの?」
「泳げないし、あんまり海とか得意じゃないんだよね。小さい頃に溺れたことがあって」
「鈍臭そうだもんな」
今、私のトラウマをカミングアウトしたのに。
返ってきたのは小馬鹿にしたような佐倉の声。
確かに、鈍臭いのは否めないけど。
「うるさい。……ほら、せっかくみんなで来たんだから、せめて一緒にいようよ」
スッと立ち上がって、一緒に砂浜に戻ろうと佐倉を目で促す。
そんな私に、小さくため息をついた佐倉は立ち上がった。
「え、行くの?」
「はぁ?お前が一緒にいようって言ったんだろ」
……だって、あんまりにも素直に立ち上がるからビックリして。
もっと渋られるかと思ってたのに。