もう、我慢すんのやめた

***


「やっぱり、ここにいた」


私を見つけるなり、眉間にシワを寄せる佐倉。
そんな嫌そうにされると心が痛むよ。


「……なに?」

「別に、どこいったのかな〜って探しに来てみただけ」

「あんな人混み、いられねぇよ」


佐倉が座ってるベンチの反対端に腰を下ろせば、顔を見なくても雰囲気で嫌がられてるのが伝わってくる。


「そんな嫌そうにしないでよ。人一人分はちゃんと離れたのに」

「……海、行かねえの?」

「泳げないし、あんまり海とか得意じゃないんだよね。小さい頃に溺れたことがあって」

「鈍臭そうだもんな」


今、私のトラウマをカミングアウトしたのに。
返ってきたのは小馬鹿にしたような佐倉の声。

確かに、鈍臭いのは否めないけど。


「うるさい。……ほら、せっかくみんなで来たんだから、せめて一緒にいようよ」


スッと立ち上がって、一緒に砂浜に戻ろうと佐倉を目で促す。

そんな私に、小さくため息をついた佐倉は立ち上がった。


「え、行くの?」

「はぁ?お前が一緒にいようって言ったんだろ」


……だって、あんまりにも素直に立ち上がるからビックリして。

もっと渋られるかと思ってたのに。
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