もう、我慢すんのやめた
「そんな怖い顔してたって始まらないし、まずは友達になろうよ」
スッと差し出した手。
チラリと向けられた視線。
だけど、私の手に佐倉くんの体温を感じることはないまま。
「友達になんかぜってぇなんねぇ」
やっぱり、佐倉くんの視線はすぐに窓外へと向けられてしまった。
これは、さすがの私でも攻略不可能かな。
今まで”友達になろう”と声をかけて、ここまで拒絶されたことはない。
嫌なら嫌で仕方ないけど、
人間誰しも、心というものがあるわけだし。
もっと優しくお互い嫌な気持ちにならない断り方ってのもあると思うんだけどな。
「ってことだから、来週の臨海研修は佐倉の歓迎も含めてみんなで楽しもう」
先生の声にクラス中から”は〜い”と緩い声が上がった。
そっか、来週はもう臨海研修か。
佐倉はどの班になるんだろう?
もう、班は決まっちゃってるし。今からどこかの班に加わるの、この性格じゃ大変だろうな。
でも、一緒の班になろうなんて声をかけたところできっと嫌な顔されるに決まってる。
……ま、先生が勝手にどこかの班に加えるとか
なるようになる、よね。