もう、我慢すんのやめた
考えてみれば、
佐倉に後ろから抱きしめられるの2回目だな。
「実は佐倉、芽唯に気ぃあるんじゃないの!?咄嗟に女性恐怖症のやつが布団に女引きずり込める?」
「俺も、佐倉が芽唯を布団に引きずり込んだ時はかなり驚いた……」
「ひ、引きずり込むってやめてよ……!」
萌菜とテツの言葉に、つい大声をだしてハッと口を手で抑える。
またハルミチが来たらやばい。
今度こそモアイが来る可能性もあるし……。
「あれじゃん?佐倉、自分でも気付かないうちにメイメイのこと好きになったとか!」
私をサラッと聞いたこともないあだ名で呼んで、ありえない感情を押し付けようとする宮田くん。
「みんな、面白がりすぎ!ハルミチにバレなかったんだしそれでいいじゃん?」
ね!と、佐倉に同意を求めれば
まだ佐倉の布団に乗ったままの私に視線を向けた佐倉が少し考えたような顔をした。
だけど、
「言ってんだろ?……松永のことは女だと思ってねぇって」
すぐにいつものスカした佐倉に戻ってしまった。
それから、佐倉にしては珍しく自分から私の目を真っ直ぐ見て、
私にだけ聞こえるくらいの小さな声で
「……だから、これは錯覚だから」
───そう、呟いた。