もう、我慢すんのやめた


***


「んじゃ、また明日ね」

「うん、バイトがんば〜〜」


放課後。


勤労少女の萌菜に手を振って教室を出ていく後ろ姿を見送れば、長い一日の終わりにフゥと小さく空気が抜けた。



さっきまであんなにも明るかったのが嘘みたいに、窓の外は今にも雨が降り出しそうな雰囲気。


いやだなぁ、雨。
傘もってきてないし、早く帰ろ。


そう思って、机の上に乗っかったままだったカバンに手を伸ばしたとき。



「芽唯いる?」


教室の入口で、私の名前を呼ぶ声がした。


……聞き間違えるはずない。
いつもどこかで、この声を探している自分がいるんだから。


だけど、瞬時に思考は追いついてくれない。
なんで?どうして、ここにいるの?

……なんで、私を探してるの?



「おい、芽唯!呼んでるけど?」


教室の入口。

1番前の席に座ってるテツが、私の方を向きながら大きめの声で叫ぶから

余計なお世話だ……なんて思いながらも、その声に合わせて顔を上げた。

そんな私をテツの隣で不思議そうに見てる佐倉と目が合って、なんでかわかんないけど慌てて逸らした。


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