もう、我慢すんのやめた
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「んじゃ、また明日ね」
「うん、バイトがんば〜〜」
放課後。
勤労少女の萌菜に手を振って教室を出ていく後ろ姿を見送れば、長い一日の終わりにフゥと小さく空気が抜けた。
さっきまであんなにも明るかったのが嘘みたいに、窓の外は今にも雨が降り出しそうな雰囲気。
いやだなぁ、雨。
傘もってきてないし、早く帰ろ。
そう思って、机の上に乗っかったままだったカバンに手を伸ばしたとき。
「芽唯いる?」
教室の入口で、私の名前を呼ぶ声がした。
……聞き間違えるはずない。
いつもどこかで、この声を探している自分がいるんだから。
だけど、瞬時に思考は追いついてくれない。
なんで?どうして、ここにいるの?
……なんで、私を探してるの?
「おい、芽唯!呼んでるけど?」
教室の入口。
1番前の席に座ってるテツが、私の方を向きながら大きめの声で叫ぶから
余計なお世話だ……なんて思いながらも、その声に合わせて顔を上げた。
そんな私をテツの隣で不思議そうに見てる佐倉と目が合って、なんでかわかんないけど慌てて逸らした。