もう、我慢すんのやめた
「おー!いたいた、やっと見っけた!」
突然、中庭に響き渡る大きな声。
それに瞬時に反応した萌菜は、ここに来てやっとパンを口に運ぶ手を止めた。
「……どーしたの、テツ」
「すげぇ探したんだぞ、呑気にパンなんか食いやがって」
「はぁ?昼休みなんだから何しようと勝手でしょ」
なんて言いながら再び、パンを口に運ぶ萌菜。
同じクラスの竹本哲太(たけもとてった)、通称テツは、萌菜の幼なじみでクラスのムードメーカー的お調子者男子。
……萌菜が10年以上、片想いしている相手だ。
花より団子の萌菜が、テツの前ではいつも不思議な程に女の子になるのが可愛くて
テツにはもっともっと萌菜に絡んで欲しい、なんて個人的に思ってる。
だけど、今の私はテツと萌菜の絡みよりも、テツの後ろに不機嫌そうに立ち尽くす彼が気になって仕方ない。
「……佐倉くん?」
私の呼びかけに、不機嫌レベルが増した。
こんなにも不機嫌が顔に出る人、初めて見たかも。
「あー、そうそう!佐倉も来週の臨海研修、うちの班に加えてもいいよな?」
「……え?」