もう、我慢すんのやめた
「じゃあ、どうして……そんなに頑張ってくれんの?」
「こうでもしないとお前、すぐどっか行くじゃん」
「……佐倉、バカだね」
「っせぇな、誰のせいだよ」
もう、目は合わない。
恥ずかしさから俯いた佐倉が、それでも私の手を掴んで離さないから
その優しさに鼻の奥がツーンとして、また涙がにじんでくる。
「弥一は幼なじみで、私の好きな人だったんだ」
「……」
「両思いかも?って思ってたのに、突然『彼女できた』とか言われて、気付いたら疎遠になって」
「……ん」
たまにチラッと顔を上げながら、短く相槌を打って、黙って私の話を聞いてくれる佐倉。
「ずっと、雨の日に古傷が疼くみたいに、疎遠になってからも弥一のこと忘れられなかった。だから今日、弥一に呼び出されたときは”もしかしたら弥一も私のこと好きなのかな”とか期待しちゃってた」
「恥ずかしいよね、ほんと」そう言って、ハハッと小さく笑うのが精一杯だった。
あわよくば、今の言葉から”弥一が私を好きじゃなかったこと”も伝われって願う。
だって、これ以上言ったらもう……絶対、泣く。