もう、我慢すんのやめた

そこに居たのは、作業服みたいな汚れたツナギを着て、手にはゼリーやスポーツドリンクの入った袋をぶら下げた私よりも少し歳上に見える男の人。


きっと、佐倉のお兄ちゃんだって、直感的にそう思った。


だって、顔も、背丈も、雰囲気も、声も
びっくりするくらい全部が佐倉と似てる。



「……あ、あの。海登くんのお見舞いに」

「帰ってもらえる?」

「え……」


言いかけた言葉を、最後まで言わせてもらえないまま、冷たい瞳が私を追い払う。


「海登の新しい学校の人?悪いけど金輪際、海登に付きまとうのやめてくれ」

「付きまとう……って」

「無自覚なら尚更タチ悪いな。そういうの、犯罪っていうんだよ。もし次にまた海登に何かあったらタダじゃおかねぇぞ」



ドクン、ドクンと嫌な音を立てて心臓が加速する。

冷たい瞳、冷たい言葉、全てが私を拒絶してるみたいに思えて、その場に立ってるのがやっと。


ただ、お見舞いに来ただけなのに。

”犯罪”ってなに?
”もしまた海登に何かあったら”ってなに?


グルグル頭の中を回るそんな言葉たち。
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