もう、我慢すんのやめた


「……あれ?佐倉?」

「っ!」



ジュース売り場へ向かう途中、突然誰かが佐倉を呼び止めた。


「やっぱ佐倉じゃん!……久しぶりだな」

「春田……」

「なに、デート?」


私と佐倉を交互に見ながら、春田と呼ばれた彼は少し驚いた顔をする。


対する佐倉は、春田くんを見てからほとんど固まったように動かない。


「…………」

「あ、友達と集まることになってて、その買出しです」



何も言わない佐倉に代わって口を開けば、春田くんは「あー、なるほどね」とだけ言って、だけどその顔は全然納得してない。


「治ったの?女性恐怖症」

「……だったら?」

「俺、なんも力になれなくて。佐倉が告白断った後に、宇野から付き纏われてるって聞いた時も、正直羨ましいくらいに思ってた」

「付き纏われてた……?」


春田くんの言葉に思わず聞き返す。
告白を断ったのに、どうして付き纏われるの?って不思議に思ったから。


しつこく告白されてたってことかな?



「俺が宇野のこと好きだって知ってて、俺に宇野のこと悪く言えなかったんだろ?……後になって知った。宇野の完全な逆恨みで、有りもしない噂学校中に流されて……」

「春田、やめろ。俺はもう忘れた」
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