もう、我慢すんのやめた


***


アンティークな雑貨に囲まれたオシャレな店内。
この空間だけ、ヨーロッパみたい。


"私たちには似合わない場所だけど、場所さえ借りれたらそれでおっけ〜っしょ!"


終業式の日に萌菜が言ってた言葉の意味を、今日ここに来てやっと理解した。

萌菜、ここでバイトしてるのか〜。
ちょっと想像出来ないかも。



「よーし!これで準備おっけ〜」

「あとは全員揃うの待つだけだな!」



2人で楽しく装飾していたらしい萌菜とテツは上機嫌で、合流した時にはうっすら良い雰囲気だった。


これじゃあ、くっつくのも時間の問題かな。
早く2人が幸せになればいいのに……。


焦れったいっていうのはまさにこれだ。


相変わらず、楽しそうにあーでもないこーでもないと言い合う2人を店内に残して、私はバルコニーのドアをそっと開けた。


バルコニーで黄昏る背中にゆっくり近づいて


「夕日、綺麗だね」


なんて声をかけようか迷った私は、普段思っても言わないようなセリフを吐いて、ただのロマンチストと化して……無言のままの佐倉のせいで


今、猛烈に恥ずかしい。
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