もう、我慢すんのやめた
スーパーからの帰り道、佐倉は何も話さなかった。
私も、そんな佐倉から無理に聞こうとは思わなかった。
だけど、もちろん"忘れた"なんてのは嘘だと思うし、"女性恐怖症"だって有りもしない噂なんかじゃない。
全部全部、1人で抱え込んでしまう佐倉の隣には立てなくても、せめてこうしてできるだけ近くにいて
ありのままの佐倉を見ててあげたいって思った。
「……あと少しで始まるよ。早く来てよね!……じゃ、私は先戻る」
もしかしたら今の佐倉には、そんな私の存在すらも面倒くさいかもしれない。
沈黙に耐えかねて、店内に戻ろうとした私の手を
佐倉の手が───ギュッと捕まえるから
その瞬間、上手く息が吸えなくなってしまう。
「……少しだけ、」
「佐倉?」
握る手に力を込めて
まるで「行くな」って言われてるみたい。
繋いだ手から、佐倉の切ない気持ちが流れ込んで来るみたいに……私まで苦しくて仕方ない。
だけど、今は絶対にこの手を離してやらない。
分け合えるものなら全部私が半分もらうから。
だから、そんなに悲しい顔、しないで欲しい。