もう、我慢すんのやめた
「握力だけじゃないよ。芽唯パワーがあれば百人力」
「怖っ」
「ちょっと〜!!」
ハハッと笑った後、佐倉はまた口を開いた。
「結局、"春田のことで相談"ってのは嘘で、春田の気持ちを知ってた女が、春田の気持ちを利用して俺を呼び出しただけで。
呼び出された先で、いきなり好きだって言われた」
薄々、さっきの春田くんとの会話で佐倉に何があったのか、自分なりに整理して理解したつもり。
なのに、佐倉の口から聞くと
佐倉の切なさ、悲しさ、辛さ、その全部が私の中に流れ込んで来て、苦しい。
「耳を疑った。同じクラスだったけど話したこともなかったし、ましてや春田の好きなやつだし。
その場で、なるべく傷つけないように、だけどキッパリ振った……つもりだった」
だけど、と続けた佐倉は下唇を噛んで。
「はぁ」と1つため息をこぼしてから、その場にしゃがみ込む。
相変わらず、手は繋がれたままで。
やけに、繋がれた手だけが温かい。
「その次の日から、その女からのストーカー行為が始まった」
「ストーカー行為?」